私達は毎日欠かさず食事を摂りますが、これは健康的に生活するために必要不可欠な事です。その食事に関わる問題で避けて通れないものに食中毒があり、特に夏(6月〜10月)にかけて多発し猛威をふるいます。ここ数年食中毒の発生件数は増加しており、魚介類・青果を扱う私達市場関係者も、充分な注意・知識・自覚を持って取り組まなければならないと考えています。このページでは皆さんにも『食中毒基礎知識』と題して、原因や予防法などを【簡単・わかりやすく】をモットーにお知らせしたいと思います。

多数の食中毒の中でも発生件数が多いのが、【サルモネラ】【腸内ビブリオ】【カンピロバクター】【ブドウ球菌】などで、全体の70%以上がこれら「細菌性食中毒」と呼ばれるものです。この細菌性食中毒のなかには、「腸管出血性大腸菌O-157」も含まれます。また最近「ウイルスによる新しい食中毒」【小型球形ウイルスSRSV】(ノロウィルス)も報告されています。

>>平成16年度食中毒発生状況

 
  • 自然界に広く分布し2000種以上の型があり、その中でもネズミチフス菌・腸炎菌が代表的です。一般的に10000個/g以上の菌が増殖した食品を食べると感染するといわれますが、幼児や高齢者は少ない菌量でも感染の可能性がありますので注意してください。
  • 食肉・卵が主な原因です。特に最近、鶏卵が原因の腸炎菌による食中毒が増え「サルモネラ菌チェック済み」表示の卵も見かけます。これまで卵焼き・オムレツ・マヨネーズ・ケーキなどから食中毒がおこっています。
  • 半日〜2日で吐き気や腹痛が起こり、数日間、下痢・38℃前後の発熱などの症状が続きますがほとんどの場合点滴や抗生物質の投与で治ります。風邪と症状が似ているので注意が必要です。
  • 食肉・卵はよく加熱し(熱に弱い)、調理後は早めに食べる。卵を生でたべるときは、新鮮なものを食べる直前に割る。まな板・包丁などよく洗い熱湯や漂白剤で殺菌する。
  • 塩分を好み自然界では海水中に存在しています。魚介類に付着して繁殖し、夏に集中的に発生します。増殖能力が高く、短時間で増殖します(10分間で2倍)が、真水・熱に弱く、(100℃数分で死滅)4℃以下では増殖しない性質もあります。
  • 魚介類が主な原因で、内臓やエラに付着した菌が、刺身・寿司など生食することによって感染します。冷蔵庫やまな板を通して他の食品を汚染し、食中毒をおこすこともあります。
  • 10〜24時間で激しい腹痛・下痢が起こります。この状態が何度も続くため脱水症状をおこすこともあります。発熱はほとんど無く抗生物質の投与で2〜3日で回復しますが、下痢は回復までに1週間くらいかかるようです。
  • 魚介類は真水でよく洗う(淡水に弱い)。なるべく加熱して食べる(熱に弱い)。調理直前まで冷蔵庫で4℃以下で保存する(4℃以下では増殖しない)。刺身・寿司はできるだけ早く食べる(冷蔵庫から出て2時間以内)冷蔵庫に食品を詰め込みすぎない。調理器具はよく洗う。
  • ふだんは鶏や牛などの腸にいて、食品や飲料水を通して感染します。発生件数が最近になって増え注目されています。空気に触れると菌は死滅しますが、10℃以下のところでは生き続けます。
  • 食肉・牛乳・飲料水などが主な原因で、犬や猫などのペットも保菌していて接触感染する例もあります。
  • 2日〜7日で発熱・倦怠感・頭痛・めまい・筋肉痛などが起こり、続いて吐き気・腹痛・下痢がおこります。
  • 食肉は十分加熱する。調理の際に手を洗う。調理器具をよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。
  • 自然界に広く分布し健康な人の皮膚やのどにもいますが、汚染された食品の中では毒素をつくり食中毒をおこします。熱や乾燥にも強い性質です。(酸やアルカリ性の強いところでも繁殖します)
  • 調理する人の手から食品に伝わり取り込まれますので、手作りの食品などが主な原因といわれています。手や指に傷・湿疹があったり、傷口が化膿してるような場合食品を汚染する確率が高くなります。
  • 短時間で吐き気・腹痛・下痢がおこりますが、ほとんどが24時間以内に回復します。
  • 手をよく洗う。食品を室温で長時間放置しない。調理後は早めに食べる。調理器具の洗浄・殺菌をする。(手にケガしたときは注意が必要です。手袋などを使いましょう)

(ノロウィルス)
  • 名前の通り、小型で球状の構造をしたウイルス(Small・Round・Structured・Virus)の感染でおこる食中毒です。大きさは細菌の1/100ほどで、細菌と異なり食品中では増殖せず人の腸管細胞内に入ると増殖します。他の食中毒との違いで特徴的なのが発生時期が11月〜3月の冬に多いことです。(これは原因食品に関係あります)
  • カキ・蛤・ムール貝などの二枚貝が主な原因です。貝類はプランクトンを餌にするため海水中に微量に存在するSRSVを一緒に取り込んで、消化管である中腸線(黒い部分)に蓄積してしまいます。特にカキは、中腸線ごと食べるので、SRSVを取り込む可能性がほかの貝類より多くなります。そのため冬季に発生件数が増えるのです。
  • 1〜2日で激しい嘔吐・下痢をおこし、頭痛・発熱・咽頭痛などカゼによく似た症状がみられることもあります。通常3日以内に治癒します。
  • カキの生食には注意(体調など考慮)して下さい。二次感染を防ぐため、調理の際は手洗い・うがいをする。調理器具の洗浄・消毒をおこなう。


大腸菌は健康な人の腸内や家畜などに存在し、殆どのものが無害ですが、その中に腸炎をおこす【病原大腸菌】が5種類あり、O-157はその中の【腸管出血性大腸菌】の一つです。感染力が非常に強く、猛毒の「ベロ毒素」をつくり出す性質があり感染すると激しい腹痛・血便、さらに進行すると腎臓障害・神経障害などをおこし、命にかかわる危険な状態に陥ることがありますが、(幼児・高齢者は特に注意が必要といわれます)早期に適切な処置を行えば回復できますので、初期に医師の診断を受けることが重要です。予防策は上記の食中毒と同様、食品の十分な加熱、調理器具の洗浄・殺菌、冷蔵庫での低温保存、井戸水・受水槽の衛生管理などです。