お魚はどういう流通経路をたどるの?
それは昔はどうなっていたの?
上の図で説明しましょう。だいたい昭和30年代までは
の流れがほとんどでした。つまり
@生産者
がその産地の
A市場
に商品を出荷し、そこで産地の価格が形成されます。それを産地出荷者が各消費地の
C
中央卸売市場
等に出荷します。卸売市場では卸会社(産地から商品を集荷する会社)と主に仲卸会社(商品を仕入れ小分けして小売店に卸売りする会社)との間で「せり」という取引方法で消費地市場の価格を決定します。供給と需要の適合で公正に価格を決定する手段として「せり取引」が最良と考えられたのです。こうして仲卸が仕入れた商品を
D各小売店
が必要な量だけ仕入、調理等をして店頭に並べ
E消費者
に販売するという流れでした。この中央卸売市場を中枢とする流通の仕組みは「生で腐りやすい」という商品特性と流通両末端(生産者と小売店)が小規模、零細だった時代には最も効率的で公平、公正な仕組みでした。
それがどういう理由で変化してきたの?
急速な技術革新と経済成長によって流通環境は大きく変わっていきました。特に昭和40年代、全国的な高速道路網の整備や冷凍技術の進歩、大手水産会社等による全国的な冷蔵庫施設の整備、また消費地にあってはスーパーマーケット等の多店舗展開、大型化とめざましい変貌を遂げてきました。この変革がもたらしたものは、「生で腐りやすい」という商品特性そのものの変化(冷凍品等の場合は工業製品化)と流通両末端の規模の拡大です。これらは消費地の卸売市場のみに依存していた流通の仕組みを大きく変え得る要因となりました。すなわち、上の図の
の流れです。
C消費地市場
を経由しないで
A産地
、あるいは
B加工場
から直接
D小売店
へと流れます。この流れを「産地直結」、「市場外流通」と呼びます。
お魚も「産地直結」をすれば必ず安くなるの?
結論を先に言えば「そうとは限りません」。と言うのは、商品によるという意味です。「産地直結」というと一般的に「安い」というイメージにつながりますが、それは大手小売店が消費者に対して最も説得力のある宣伝として使ってきたからです。現実的には冷凍魚等の「工業製品」は流通段階を短縮することによってコストダウンを実現できれば安くなります。ところがよくテレビや折り込みチラシで「産地直送」を謳っているのは、ほとんどが「生鮮魚」です。しかし「生鮮魚」はそうしたPRの企画締切の時には、まだどこかの海の中を泳いでいます。最近の例として、某大手スーパーがサンマの出始めの時期に大々的に「1尾100円」のテレビCMを流したため、他の小売店も一斉に「サンマ買い」に走り、全国的にサンマの相場を急騰させてしまったことがありました
最近の流通経路で特に変わってきたことはあるの?
ここ数年間で特に変化が著しいのは、上の図の
の流れです。これまでの流通段階である
A
B
C
D
のすべてを経由せずに、「生産者から消費者へという究極の経路」です。しかもそのコミニュケーションの手段として、今あなたがこうしてご覧になっているWebを使用しているということは、まさに画期的な変化であると言えます。しかし、この流通経路が大きな流れとなるまでには、まだ数年の時間を要します。通信手段、費用、決済方法、セキュリティ等々インフラの整備が待たれます
これからのお魚流通の仕組みはどうなっていくの?
お魚に限らず流通の仕組みは、その時代の要請、つまり消費者の欲求を満たす方向に変化していきます。このページでごくおおまかに説明しました通り、現にこれまでの経過がそれを物語っています。私たちの生活は飛躍的に便利になりました。しかしその反面、環境汚染や資源の枯渇、新たな病原菌の出現等「負の部分」も常に隣り合わせています。それらと格闘しながら「新たな流通の仕組み作り」に挑戦していくことになるでしょう。ただ、一つ言えることは、上の図に示したこれまでの流通経路がすべて消えて、「生産者から消費者へ」という図式だけが残るというのでは勿論ありません。海で魚を獲ってからあなたの食卓に上るまで、必要とされるすべての機能をトータル的にコーディネートできる仕組みこそが求められているのです。そして、それは同時にあなたにとって「より便利で楽しい買い物」を実現するための仕組みに他なりません。