◆◇◆いか様!の話◆◇◆
「イカ」と聞いて皆さんはどのイカを思い浮かべますか?もちろん地域によってさまざまかと思いますが、スルメイカ、ヤリイカ、モンゴウイカ、アオリイカ、ホタルイカと沢山いますね。イカの種類は世界に何と460種もいるそうです。日本近海に棲んでいて、食用にされるイカだけでも30種に及びます。ちなみに日本のイカの漁獲量はもちろん世界一で、世界の総水揚げ量の80%を占めています。今日はそんなイカの中でも最もポピュラーな、皆さんがお店でよく見かけるスルメイカを中心にお話します。
▼イカってどちら向きに泳ぐの?
スルメイカの胴体は円筒形で、中央部がややふくらみ、ヒレは三角形(両側合わせれば菱形)をしています。もしかしてこの部分を頭だと思っていませんか?その下に大きな目があり、足が付いている。ウン、この方が人間にとっては自然な気がしますよね。ところがイカは「軟体動物門、頭足綱」という分類になります。つまり、頭に足が付いているのです。というわけでイカは当然頭の方向に泳ぎます。ヒレのついている方向ではありません。テレビでイカの泳いでいる様子を見たことのある人も多いかと思いますが、身が透き通って本当にきれいですよね。
▼「烏賊」という字は?
イカが海面にのんびり浮かんでいると、空を飛んでいたカラスが、イカが死んでいるものと思い、ついばみに来ました。するとイカはそのカラスを素早く長い足でからめ取り、海中に引きずり込んで食べてしまいました。つまり、イカが烏(カラス)を賊害(ぞくがい:殺すこと)したことから「烏賊」という字が当てられるようになったそうです。これは中国のお話です。なるほど!何と分かりやすい話でしょう!?
▼イカ墨の話
イカの別名を「墨魚」と言います。ドイツでも「インク魚(もちろん和訳ですが)」というそうです。イカ墨といえば何年か前に随分はやりましたね。ポテトチップスとかクッキー、パン、スパゲッティ、果てはラーメンまで。見た目は決して良くないのですが、「旨い」「体に良い」と言われ、大ヒットしました。今でいうと丁度、キムチに代表される「韓国風」のブームと一緒ですね。流行が黒から赤にチェンジしたのですから、次は何色でしょう?
さて、話をイカ墨に戻しましょう。攻撃された時に墨を吐くといえば、イカとタコを思い浮かべますが、両者の墨はまったく異質なのです。タコ墨はイメージ通り「煙幕」です。吐き出した墨はモウモウとした黒い煙となり、それに紛れ身を隠す、というのがタコ。ところがイカの場合は違います。吐き出した墨は自分と同じくらいの塊になって、しばらくは散りません。つまり、墨が自分の替え玉となって敵の目を欺くという訳です。敵から見ればまさに「イカサマ」ですよね。
▼(干し)スルメの名前の由来
スルメというのはご存知の通り、イカを開いて干した物のことですが、原料になるイカは何種類もあります。それなのに、それらをまとめて「スルメ」と呼ぶのは何故なのでしょう。一説には、昔(平安時代)イカやタコのように墨を吐くものの群れを「すみむれ」と呼び、これが転じて「スルメ」になったと言われています。ちなみにこの時代には、タコの干した物もスルメと呼ばれていたそうです。
▼アタリメって?
ところで、スルメのことをアタリメとも呼びますよね。これは何故か?「スル」が「アタリ」に変わったのは、「スル」=「擦る(使い果たす)」を連想させて縁起が悪いので、いっそ「当たり」に変えてしまおうというノリだったようです。ですから、「当たり」だから縁起がいいと勘違いしてギャンブルをやっている最中に食べないほうがいいかもしれませんよ。
▼イカパワー全開!
イカは低脂肪、低カロリー、高タンパク質で、ダイエット中の人や肥満・糖尿病などにお悩みの人にはおすすめです。また、豊富に含まれるタウリンは、血中のコレステロールを下げ、中性脂肪を減らし、血圧を正常に保って、糖尿病を予防する効果があります。さらに墨に含まれるリゾチームというアミノ酸の一種は、ガンに有効と言われています。このように「イカパワー」は強い味方ですが、味そのものは比較的淡白なため、塩や醤油を多めに使いがちです。くれぐれも塩分の摂りすぎには注意したいですね。
■メールマガジン<お魚よもやま情報>2000年9月号