◆◇◆魚へんに春の話◆◇◆

サワラってこんな魚です
サワラと言えば、この時季ですと小売店でよく見かけると思います。でも、切り身ですよね?サワラを丸のまま並べることはめったにありません。それは体長が1メートルにもなるからです。長さの割に頭が小さくスマートで、銀色の肌に青褐色の斑点のあるきれいな魚です。また、魚体の断面は丸くなくやや偏平です。そんな姿から「狭(い)腹」で、サハラからサワラと名付けられたといいます。

ところで外国ではどうかといいますと、ロシア名のサヴァラはこの日本名に由来しています。また、イギリス、ドイツ、オランダ名では「サバの王様」の意味だそうです。ちなみにサワラの分類は、スズキ目サバ科サワラ属です。

サワラというのは成魚の名で、小型魚(若魚)をサゴシとかサゴチと呼びます。こちらはサワラに比べるとグンと安く販売されていますが、さっぱりとした脂が乗っていて、塩焼きにおろし醤油でも十分美味いですよ。

サワラは北海道南部から東シナ海にかけての沿岸の表層を棲家にしています。イワシやイカナゴなどの小魚を追って群れをなして移動します。冬季は湾外の深場で寒さをしのぎます。一般的に関東より関西の方がよく食べられていますが、関東でも今の時季は特に「寒ザワラ」といって旬の真っ最中です!
とは言うものの、ハマの魚河岸のサワラの入荷のピークは3月で、産地は関東周辺よりも福岡県が圧倒的に多くなります。

なぜ魚へんに春なの
魚へんに春で鰆(サワラ)。この字を見るとなぜか嬉しくなるのはまだ寒い時季のせいでしょうか。魚って、日本語って本当にいいですよネェ〜。
サワラの関東での旬は冬と言いましたが、関西では春です。サワラは特に瀬戸内海では、水温が上昇する4、5月ごろに産卵のために現れます。このことからサワラは春告魚として、「鰆」という字が作られたそうです。「狭腹」では気分が出ませんよね。

サワラは養殖に向かない?
サワラの子魚は、親と違って頭でっかちで歯も丈夫です。イワシのシラスや小魚をバリバリ食べて大きくなります。子魚を狭い水槽内で飼うと共食いが激しく、養殖には向きません。このため、種苗生産と放流事業を行っています。

サワラの料理とパワー
サワラの肉は脂肪の多い、くせのない上品な白身です。鮮度の良いものは、もちろん刺身が美味です。照り焼きや塩焼き、天ぷら、魚すき、味噌漬、粕漬、酢〆、酒蒸し、洋食ではムニエル、グラタン、ホイル焼など料理用途は広いですよ。但し、煮魚には向きません。

サワラを料理するコツは、水分をしっかり抜くことです。サワラは水分を多く含んでいますので、料理する前に軽く塩を振り、冷蔵庫でしばらく寝かせて身を締めてからの方がいいですよ。冷蔵庫から出したら水で塩を洗い流してフキンで拭いてから料理にかかってください。

サワラパワーは絶大です!
人間の脳に入り込んで、脳の発育を促す数少ない物質として注目されているDHAが、何とサンマよりも更に多いのです!DHAは老化やボケ、痴呆症等の症状の改善に深く関わっていることが明らかになってきています。

サワラの目利き
サワラの切り身の目利きは、皮の斑点がくっきりしていること、血合いが紅いこと、身が白くつやがあることです。そして、一般に魚は頭に近い方が美味しいと言いますが、サワラは尾に近い部分の方が美味です!から切り身の形をよく見て選んでください。

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2001年2月号