◆◇◆春の風物詩の話◆◇◆

ホタルイカってイカの子供!?
いえいえ、立派なおとなです。体長4〜7cm、体重約10gになるホタルイカ科のイカです。世界におよそ40種くらい分布していて、いずれも小型か中型で、典型的なイカの体形をしています。日本では、日本海全域、太平洋岸でも北海道から四国沖の水深200m〜1000mの深海に棲んでいます。

産地ではもともとマツイカと呼んでいましたが、明治時代に動物学者の渡瀬博士がホタルイカと命名してから、この名前が一般的になりました。ラテン語の属名ワタセニアもこれにちなんだものです。また、英名firefly squidは何と日本人の造語だそうです!

ホタルイカの寿命はメスが12〜13ヶ月、オスはそれより1ヶ月短いと考えられています。オスはメスに精子を渡して生涯を終え、メスも産卵後間もなくその生涯を終えます。富山湾の場合、新湊から魚津までの沿岸域で産卵します。このため、沿岸の定置網で捕獲したホタルイカは、ほとんどがメスだそうです。

なぜ光る?
蛍烏賊。もちろん蛍のように光る烏賊だから付けられた名前です。その発光する仕組みも陸上のホタルと同様で、酵素の働きによるものです。体は小さいですが、胴、頭、腕に何と1000個もの発光器を持っています。特に腕の先端にある発光器は強力で、新聞の字が読めるほど明るいそうです。でも本当にこの「蛍の光」で新聞を読んだ人がいたかどうかは不明です。

ホタルイカは暗い時とか暗い場所(深海)を照らすために光るのではありません。そういう意味では逆に明るさに溶け込むため、カムフラージュのために発光量を調節しています。夜明け前のまだ暗い時に、魚網の中で光るのは、敵に対する眼くらましのフラッシュの役目を果たしているようです。人間にとっては、神秘的で美しい光景ですが、当のホタルイカは逃げようと必死に発光しているのです。

富山湾の春の風物詩 特別天然記念物
富山湾の滑川から魚津の沖合いは世界的にも有名な「ホタルイカ」の生息地でその群游海面は、特別天然記念物に指定されています。産卵期を富山湾の沿岸で迎えたホタルイカは、昼間は深みにいて、夕方から浮上しながら岸に近寄り、午前0時から午前4時の間に産卵した後、夜明けとともに再び深みに降下しながら岸を離れるという行動を群れごとに繰り返します。

毎年4月中旬から5月上旬までの間、滑川漁港からほたるいか観光船が出ているそうです。
詳細は滑川市観光協会のホームページをご覧下さい。

富山湾のホタルイカ漁は3月1日に解禁され、兵庫、石川県とともに主力産地が出揃い、これから次第に入荷の最盛期へと向かっていきます。今年も例年並の漁獲高が見込まれています。皆さん、ホタルイカの食べ頃は、まさにこれからですよ!

ホタルイカパワー全開!
ホタルイカはタンパク質とビタミンAが豊富で、タウリンやアミノ酸なども含有しているため、スタミナ面での効果もバッチリです。

目利きのポイント
ボイルホタルは姿がふっくらしていて丸いもの。表面の色艶がよく、乾いていないものを選んでください。生ホタルは同様に表面の色艶が良く、白くなっていないものが新鮮です。

ホタルイカ料理
全国的に食べられるのは、圧倒的にボイルしてあるものですね。それを酢味噌でいただくのが最もポピュラーでしょう。後は、沖漬けとして加工されているものも見かけると思います。鮮度の良い生が手に入る場合は、目と内臓、軟骨を取り除いてワサビまたはショウガ醤油でお刺身!エッ、あんなに小さなイカの調理は面倒?美味しく食べるには手間は省けません。他にナスやシイタケと串に刺して、「串揚げ」もグッドですよ。

ホタルイカは内臓も美味しいため、丸ごと刺身で食べたくなりますが、旋尾線虫の幼虫が内臓に潜んでいることがごくまれにあります。昨年の6月に「ホタルイカから寄生虫」という報道があったのを記憶している方もいると思います。この寄生虫は最悪の場合、腸閉塞を起こしますが、内臓にしかいませんし、高温や低温にも弱いので、生を刺身で食べるときにだけ注意すれば問題ありません。


■メールマガジン<お魚よもやま情報>2001年3月号