◆◇◆空飛ぶ魚の話◆◇◆

トビウオってこんな魚
皆さんも店頭でトビウオを見かけたことはあると思いますが、食べたことはないという人も多いのかもしれませんね。でも、特にこれからの時季は増えてきますから、次回はじっくり見て、是非食べてみてください。

▽トビウオは世界に50数種、日本近海には20数種がみられます。南の海で育ち、春から夏に産卵のために日本近海にやって来て、秋には再び南下する回遊魚です。漁場としては伊豆諸島近海や山陰沖が有名です。

▽伊豆諸島近海で春に獲れる「春トビ」は、正式名をハマトビウオといい、別名オオトビとも呼ばれる、日本近海では最大級のトビウオで、全長50cm、体重1kgにも達します。この大きさになると小売店では1尾売りはしないで、刺身等に加工されていますから、目にすることは多分少ないと思います。

▽トビウオという名はトビウオ科の総称として使われていますが、日本近海で代表的なアキツトビウオをホントビと呼んで区別しています。ホントビの全長は30〜35cmほどで、黒潮にのって群れをなして北上し、4〜7月に頃産卵のため沿岸に近づきます。他にも代表的なトビウオとして、やや小型のホソトビがいますが、これは別名マルトビとか入梅トビと呼ばれます。

▽トビウオ自身は動物プランクトンを食べます。そしてトビウオを大好物にしているのは、マグロ類やマカジキ類、シイラ等の大型魚と、そう、人間です。トビウオの姿を見たい方は、2.お魚よもやま情報資料館へどうぞ。

トビウオはこうして飛びます!
トビウオは海の表層をかなりのスピードで泳ぎますが、飛ぶ時には体を水面に突き出し、パッと大きな胸ビレを広げ、下葉の長い尾ビレで激しく海面をたたきながら、この推進力で風上に向かって海面滑走した上で、空中滑走に移ります。この時、尾ビレの打数は何と毎秒50回、滑空の初速は時速70kmに及びます。

▽トビウオの種類や大きさによって異なりますが、海面滑走は時速35km、空中では時速55kmに達します。また、高さは4〜5mで、距離はひと飛び100〜500mをグライダーのように滑空します!そして、飛んでいるうちに減速して落下しますが、海面に尾ビレが触れると再び尾ビレで海面をたたき、飛び立つことができます。

▽トビウオの体は、胸ビレと腹ビレが水平翼、尾ビレが垂直尾翼の役割を果たし、水平、垂直の飛行方向のコントロールができます。単独飛行あり、編隊飛行あり、おまけに夜間飛行もあります!

▽自由に空を飛べるようで、何だかトビウオが羨ましくなりますが、決して遊びで飛んでいるわけではないようです。やはり敵に追われて必死に空に逃げているのです。

所変われば
トビウオが空を飛ぶことに由来する地方名はたくさんあります。広島ではトリウオ、富山ではトンビ、東京ではトビ、水戸、山陰ではツバメウオ、大分ではツバクロ、山口ではツバクロウオ等です。また、九州や山陰など、アゴと呼ぶ地方も多いようです。

山陰では
トビウオのたたき、すり身の吸い物、竹輪が名物三品で、これを食さずこの地を離れるなかれと言われる程だそうです。とくに島根、鳥取の人が懐かしがる味がトビウオで、独特の青みがかった魚臭さ、たたきにしたときにかすかに残る骨の食感がたまらないといいます。懐かしい味といわれるのは、ご当地でないとこの新鮮な青臭い臭いがないからなのでしょうか。

伊豆諸島では
名産品として「トビウオのくさや」が有名です。ウ〜ン、あの臭い、あの味、左党にはたまらないでしょうね。でもそれを食べない周りの人もきっとたまらないと思いますよ!?

蛇足:くさや
クサヤとは、ムロアジやマアジ、トビウオなどの魚を開き、クサヤ液(タレ)に半日ほど漬け込んでから天日干しにして作ります。このクサヤ液というのが旨みと臭いの元です。これは干物を浸す時に使う塩水をとりかえずに、何百回も使用してきた発酵液です。本場の伊豆七島の新島には、200年も300年も続いたクサヤ液があるそうです!これが旨くないわけはない!

トビウオ料理
トビウオは、タンパク質が20%に対して脂質が少ないので味は淡白です。塩焼きやたたきが最も一般的ですが、みりんや木の芽をつけ汁に加えて焼くとか、やや濃い目の味付けにも合います。また、から揚げなど揚げ物、つみれ汁等も美味いですよ。三枚おろしにしたとき、中骨が硬いですから取ってしまった方が食べやすいです。

トビウオの目利き
全体にみずみずしい光沢があって、背中の青色が輝いていること。ウロコが落ちていなくて、眼が濁っていないこと。エラは鮮やかな赤色。身肉は透明感のある白色のように見えますが、やや青みがかった感じがするほうが味が良いです。美味しいものを選ぶためにはよ〜く見て下さいね。


■メールマガジン<お魚よもやま情報>2001年4月号