◆◇◆柳の葉伝説の話◆◇◆
ししゃもと言えば、タップリと卵を持った丸干しをサッと焼いて、頭からバリバリ丸かじり、値段も手頃だし特に酒の肴に最高!というお馴染みの魚ですね。ところが、ししゃもと思って食べていた魚が実は別の魚だったという場合がほとんどです。本物のししゃもの場合は、小売店でもわざわざ「本ししゃも」と表示していることが多いです。
▼柳の葉伝説
北海道のアイヌ民族の伝説はたくさん残されていますが、その中のいくつかに「ししゃも」にまつわるものがあります。
昔、飢饉の続いた貧しい村の娘が、病気の父親のために食べ物を探していると、川に落ちた柳の葉が魚になって泳ぎ始めました。喜んだ娘はそれをとって帰り、父親に食べさせました。孝行娘のためにカムイ(神様)が柳の葉を魚に変えたのでした。
柳の葉をアイヌ語で「シュシュハム」といいます。これが転じて「ししゃも」と呼ばれるようになりました。ししゃもはカムイが授けてくれた魚なのです。ちなみに英名も<shishamo sumelt>といいます。
▼ししゃもは北海道の限られた場所にしかいません!
ししゃもは北海道南東部の太平洋沿岸にだけ分布する日本固有種です。普段は沿岸海域で生活していますが、1歳半となる10月中旬から11月下旬の産卵期には、サケのように群れをなして故郷の河川をさかのぼります。この時季に河口部で「ししゃも漁」がおこなわれるわけです。
例年日高地方では10月の第1週、十勝、釧路地方では第3週くらいに漁が解禁になります。今頃が漁期の終盤というところでしょう。年々漁獲量は減り続けているのですが今年は今のところ好漁だそうです!
▼では、いつも食べている「ししゃも」は!?
というわけで、ししゃもの漁獲量は消費量のわずか5%位に過ぎません。残りの95%はアイスランドやノルウェー等から輸入される<キャペリン>や<キュウリウオ>などの「代用品」が大半だったのです!
▽キャペリン(カペリン)
漢字名では「樺太柳葉魚(カラフトシシャモ)」です。姿形はししゃもによく似ていますが、ウロコが非常に細かくほとんど無いように見えます。ししゃものウロコは大きくはっきりしているので、見分けることは容易です。
キャペリンは北極海から寒帯海域にかけて広く分布し、オホーツク海でも見られます。また、淡水域には入りませんし、産卵期は地域によって異なります。日本のオホーツク海沿岸では晩春から夏に産卵します。このように生態もししゃもとは全く違うです。
▽でもやっぱり<キャペリン>は<ししゃも>です!
大半の人が<ししゃも>と信じて<キャペリン>を美味しく食べているのですから、これからも<ししゃも>でいいと思います。本家ししゃもはやはり<本ししゃも>と呼びましょうよ。
▼シシャモパワー全開!
頭から尻尾まで残さず食べるししゃもはカルシウムたっぷりです!成人が1日に必要なカルシウムをししゃもだけなら7〜8尾で摂取できます。その他にもビタミンA、B2、D、Eが含まれています。最近では「骨粗しょう症」や「老化防止」などに手軽な食品としても注目されています。
▼目利きのポイント
子持ちししゃもの丸干しは尾数に惑わされてはいけません。大きくて腹がふっくらしていて、色、つやの良いもの。本ししゃもなら全体に飴色をしてふっくらしたもの、オスは背中が黒くないものがおすすめです。
▼調理のコツ・・・
ししゃもを焼いて食べるだけではもったいない!本ししゃもなら尚更です!ししゃものオスは滅多に販売されていませんが、本ししゃもならまれにあるはずです。身肉ならメスよりオスのほうが美味しいですよ。フライや天ぷら、唐揚げ、酢漬け、南蛮漬け、昆布巻きにしてもグッドです。本場北海道では獲れたてを凍らせて、ルイベとして刺身で食べるそうです!
▽シシャモを焼くときのコツは、冷凍してあるものはそのまま冷凍状態から焼き、生干しは頭に少しだけ水をつけてから焼くと頭を焦がしたり崩したりせずに、上手に焼くことが出来ます。解凍してから焼くと腹の部分が割れてしまいます。
▽フライパンで焼く場合は、油を熱してからシシャモを並べ、蓋をしないで焼きます。この時、中火ぐらいの火加減にしてください。弱火だとシシャモの水分が抜けてパサパサになってしまいます。
■メールマガジン<お魚よもやま情報>2001年11月号