◆◇◆人気ナンバーワンの魚の話◆◇◆

マグロのあの綺麗な赤色、程良く脂の乗った中トロ、食欲をそそりますね。刺身、寿司だねに欠かせません。小売店では様々な種類、様々な部位が鮮やかな色合いで幅を利かせています。皆さんのお好みのマグロは?

マグロってこんな魚です
皆さんもよくご存じのように、マグロは世界の暖かい海を大回遊しています。その中で日本の近海に現れるのは、クロマグロ(本マグロ)、メバチ、キハダ、ビンナガ(ビンチョウ)、コシナガの5種類です。これらのマグロは時季によって生で店頭に並びます。脂はなくても、甘みとコクがあって美味しいですよね。また、他に皆さんがご存じなのはインドマグロ(ミナミマグロ)ですね。これは南半球にだけ分布するマグロです。

さて、そんなマグロたちの中でも王様、本物とされるのはクロマグロです。別名には、マグロ、本マグロ、シビ、メジ・ヨコワ(幼魚)等があります。単に<マグロ>といえば<クロマグロ>を指すほどです。脂の乗った品質の良いものはマグロの中でも最も高い価格で取り引きされます。最長3m、350kgにもなる大型の外洋魚です。ただし、成長は遅いほうで、2m前後になるのに10年を要するといいます。分類上は、スズキ目サバ科マグロ属です。そうです。昨年10月号サバの話にも書いた通り、マグロもカツオもサバの仲間なのです。

一生泳ぎ続けます
紡錘形で黒光りのする背中、いかにも美味そう、いや、早そうな体形です。その外見通り、巡航速度は60km、最高時速何と160km、寝ているときでも時速20〜30kmで泳ぎ続けています。この速度の秘密は、体形の他にも表皮に埋もれて抵抗を少なくしている小さなウロコやヒレの形状、そして魚にしては高い体温を保つ仕組みです。逆にこれらが、静止することを許されない宿命を背負わせています。止まると海水中の酸素を取り入れられなくなり、窒息死してしまうのです!

クロマグロの産卵期は春から夏にかけてで、産卵場はフィリピン近海、地中海、メキシコ湾です。マグロはイワシ、アジ、サバ、カツオ、イカ類を主要なエサにします。カジキの仲間とともに食物連鎖の最上位に位置する肉食魚です。

実は不人気ナンバーワンの魚でした
今でこそ圧倒的な支持を集めるマグロですが、歴史的に見ればつい最近まで不人気な雑魚扱いでした。その訳は、マグロの産地が遠くて鮮度の良いものが江戸には入らなかったこと、それと元々の名前<シビ>にあります。シビという名の由来は定かではありませんが、<鮪>の字があてられていました。これが見た目の色の悪さ(もちろん鮮度が悪かったのですが)と、<死日>に通じるというこじつけで嫌われたといいます。要するに、単に美味いマグロが手に入らなかったからなのですね。

それが認知される日がやってきます。1810年の冬に、伊豆や相模でマグロの大漁が続き、鮮度の良いものが江戸庶民の食卓を賑わすようになったのです。その後、寿司の原形と醤油とマグロの運命的!?な出会いがあって、江戸で一大ブームを巻き起こしました。でもやはり明治初期までは、塩漬けや醤油漬け<づけ>で食べられる下級魚だったそうです。意外にもマグロの人気の歴史は浅いのです!

今や<トロづくし>
日本人は元来、脂を好まなかったため、勿体ないことにマグロの腹身などはアラ扱いでした。その嗜好が変わったのは終戦後のことだそうです。トロというマグロの脂身を指す言葉自体、その頃生まれたようです。ところが今やマグロに限らず<大トロブーム>です。ブリトロ、紅トロ、トロアジ、トロニシン等々、トロづくし、トロ崇拝です。これは養殖魚の普及が相当影響しているのでしょう。近年の養殖の研究はめざましく、長い間困難とされてきた、養殖マグロもすでに商品化されていることはご存知の通りです。養殖魚は運動量が極端に落ちますので、脂肪分は天然物の比ではないくらい増えます。そのため、天然ブリなどを食べると「脂が少なくて美味しくない。」と感じてしまいがちなのですね。

上手な解凍の仕方
急速冷凍の技術が進歩して、今では冷凍マグロの品質もとても良いです。でも、ご家庭での解凍の仕方を間違えると、本来のマグロの味を楽しめなくなります。そこで<冷凍マグロのサク>の上手な解凍の仕方を伝授しましょう。
 以下は約200g位のサクの解凍の例です。
1)用意するもの:海水濃度の温水(約40度の温水1リットルに対して塩大さじ2ハイ約40g位を溶かす。)風呂の湯加減です。
2)冷凍のサクをさっと水洗いします。
3)温塩水に1分間漬けます。
4)半解凍の状態で取り出し、水気をよくふき取ります。
5)サクを布巾かペーパータオルに包んで皿にのせ、冷蔵庫の下段で20分解凍します。
6)まだ芯が凍っている状態で調理します。

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2002年4月号