◆◇◆海のトップガンの話◆◇◆
「トップガン」と言えばご存じの通り、トム・クルーズ主演の86年の米映画でしたね。米海軍トップクラスのパイロットを集めた「トップガン」。大迫力のF−14トムキャットがスクリーンいっぱいに飛び交っていました。実は、そんなシーンが海の中でも繰り広げられているのです。
▼カマスってこんな魚です
カマスはスズキ目・カマス科に分類されます。世界に20種、日本には9種が住んでいます。その中で代表的なのはアカカマスとヤマトカマスです。この正式名ではピンときませんね。一般にカマスとか本カマスという別名で知られているのがアカカマス。水カマスとか青カマスという別名で知られているのがヤマトカマスです。
カマスの開き干しは馴染み深いですが、鮮魚の1尾物は意外と目にすることが少ないかも知れません。円筒状の体、著しくとがった頭、異様に大きな目、大きな口、鋭い歯、この風貌は結構怖いです。
▽名前の由来は
カマスの名は、その大きな口が穀物等を入れるむしろで作った大きな<かます>袋の口のようだということで付いたと言われます。また、カマスは漢字では梭子魚と書きます。これは江戸時代に、機織り(はたおり)で使う舟形の「梭(さ)」という道具に姿が似ていたことから使われるようになりました。いずれも説得力のある話ですね。
▽底千匹!?
カマスは沿岸の浅瀬、特に藻場を好んで群れで生活します。本州では6〜7月が産卵期で、5〜10cmの幼魚期にはマアジやムツの幼魚と一緒に暮らしますが、成長と共にこれらとは別行動をとるようになります。沖の岩礁の根に移動して大きな群れを作ります。この様は<底千匹>と言われるほどの密度だそうです。
本カマスは1年で25cm、2年で30cm、最大で50cm。水カマスは半年で21〜24cm、最大では35cmになります。この成長の早さは、旺盛な食欲に支えられています。
▽海のトップガン!?
カマスが怖いのはその風貌だけではありません。性格はとても攻撃的です。しかも泳ぐスピードは時速150kmにも達すると言われます。標的(餌)は上層を遊泳する小魚です。発見すると猛スピードで接近し、大きな口と鋭い歯でいきなり噛みつきます。まるで海の中で繰り広げられる空中戦です!
▽もっと怖い仲間もいます
でも、カマスは怖いというイメージは日本にはありませんね。ところが熱帯
に住むオニカマス(英名バラクーダ)は最大1.7mにもなり、どう猛な大型肉食魚としてサメ以上に恐れられているそうです。オニカマスは人を見ても逃げず、時には襲うこともあります。しかも海域によってはシガテラ毒を持つものがあり、毒カマスという物騒な別名もあります。
▽カマスの焼き食い一升めし
あまりカマスのイメージを悪くすると、日本の<人に優しいカマス>に申し訳ありませんから、名誉挽回の<美味しいカマスの話>にしましょう。「カマスの焼き食い一升めし」ということわざがあります。これはカマスは塩焼きが断然美味いという意味です。もっとも、焼き食いの本来の意味は、浜で網から飛び出して跳ねている魚をそのまま焼いて食べることだそうですから、それはそれは格別な美味さでしょうね。
▼目利きのポイント
脂が乗って一番美味いのは、やはり旬の本カマスです。大型で身が締まっていること、腹が張って弓なりに反り返っていること、目が澄んでいること、ウロコがしっかり付いていること、これらが揃っていれば申し分ありません。ただし、これは結構高価です。こういうカマスを手に入れた時には、迷わず塩焼きか刺身でどうぞ。
▼調理のコツ・・・
大型で高価な本カマスではなく、小さめで手頃な水カマスでも料理次第で、もちろんご馳走になりますよ。その名の通り、水分が多い魚ですのでそれを上手く取れば、旨味が凝縮されます。特におすすめしたいのは<一夜干し>です。薄塩で干したものに酒を塗って焼く<若狭焼き>もいいですよ。
●他にも三枚下ろしにして天ぷら、フライ、ムニエル、つけ焼き等さまざまな調理法に合いますよ。是非お試しを!
■メールマガジン<お魚よもやま情報>2002年9月号