◆◇◆海の春野菜の話◆◇◆
丁度今の時季は、小売店で「お刺身わかめ」とか「春告げわかめ」などと表示された「生食わかめ」をよく見かけます。ワカメは1年中出回っている、みそ汁の具としても食卓に欠かせない海藻ですが、時季をはずしてしまえば塩蔵や乾燥などの加工品がほとんどです。健康と美容の面からも見直されたワカメをたくさん食べてください。旬はこれから、春です!
▼名前の由来
ワカメといえば、日本人にとって欠かせない身近な食べ物の一つですね。何と1万年前の貝塚からもよく出土するそうです。大昔の文献にも税としてワカメが納められていたという記述があります。今でも「若布」という字も使いますが、この「布(め)」は、食用になる海藻の総称で、同時にワカメを指すものだったそうです。そしてこのワカメは若がえりの薬とされ、奈良時代から和布刈(めかり:ワカメなどの海藻を刈り取ること)は神事とされてきました。今なお北九州市門司のその名も「和布刈(めかり)神社」などではこの和布刈神事が行われています。
ワカメはその色から<褐藻類>に大別されます。普通は海の中のワカメを見ることができないので、濃い緑色と思ってしまいがちですが、元の色というか一番外側の色は光合成色素の褐色です。それが湯を通すと退色して、その下地の葉緑素の緑色が見えてくるというわけです。
この渇藻類の仲間には、ヒジキ、コンブ、モズク、マツモ、ハバノリなどがあります。
ワカメは、太平洋側では北海道の室蘭以南、日本海側では北海道以南のほとんどの海岸で見られます。潮流の激しいところのものほど良質とされ、鳴門、出雲、三陸、三浦など産地名を冠してブランド化していますね。
▼一年草
たくさんの種類の海藻がいっせいに成熟して、海の中が賑やかになるのが春です。地上の草木と一緒ですね。ワカメの新芽が育つのは寒のうちで、初夏には50〜150cmにまで育ち、その後は枯れてしまう「一年草」です。ちなみに関東では6月にはすべて枯れ落ち、その場所は他の海藻の舞台となります。
▼海藻王国日本VSワカメ王国韓国
日本ほどたくさんの種類の海藻を常食とする国は他にありません。それどころか意外にも、海藻を常食にする習慣自体が世界ではごく少数派だそうです。日本の他にはお隣の韓国と中国が代表国です。でも種類の多さではやはり日本がダントツです。ところがワカメに限っていえば、韓国が日本の3倍も消費しています(一人当たり)。日本でもおなじみの韓国ワカメスープ、本国ではスープを飲むものではなく、ワカメを食べるものだそうで、器にはしを刺すと立つほどのワカメの量だと言います!また、お祝い事の時にワカメを食べる習慣もあって、食べる機会、量とも日本はとてもかないません。
▼ワカメの部位
ワカメはほとんど捨てるところがないほど食べ尽くされます。葉はもちろんですが、茎は<茎ワカメ>として、根の上にできる種を作る肉厚のひだの部分は<メカブ>として、部位別に販売されます。
▼海の有機野菜
現在流通しているワカメのほとんどは養殖物です。でも始めの種付けだけが人の手で行われるだけで、生育段階は天然物と同様の自然環境の中にいます。その間、化学肥料や薬物などは一切使われず、いわば<海の有機野菜>と言えます。
▼ワカメパワー全開!
ワカメは栄養価の非常に高い食品です。それでいてノーカロリーというところが特に女性にうけて、健康食・美容食としても人気が高いですね。骨を丈夫にするカルシウム、血圧を下げるカリウム、血液をきれいにするミネラル、精神を安定させ、心身を元気にするヨウ素も豊富です。また、ワカメ特有のヌメリは食物繊維のアルギン酸で、血圧やコレステロールを下げる効果があります。これはたとえば、みそ汁の具にワカメを入れると、みその塩分をワカメの食物繊維が吸着して、体外へ排泄する働きをしてくれるのです。これだけの薬効があるのですから、古来から<若返りの薬>とされたのもうなずけます。
▼ワカメの目利き
目利きのポイントです。乾燥ワカメは黒褐色でつやがあり、厚みと弾力のあるもの。生ワカメ(湯通し塩蔵ワカメ)は緑色が濃く、つやがあって厚みと弾力のあるものを選びます。古くなると黒ずんでしまいます。
▼ワカメ料理のコツ:水の漬け過ぎ・加熱のし過ぎは御法度!
最も一般的な<湯通し塩蔵ワカメ>は元の3分の1の大きさになっています。<乾燥ワカメ>は10分の1です。水でもどすときの分量の目安にして下さい。水に浸す時間は製品の包装に書いてあるはずですが、汁物に使う場合は半分もどったところで引き上げると丁度いい柔らかさになります。サラダなどに使う場合は、もどした後、ザルにあけて熱湯をかけると色が鮮やかになります。
■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年2月号