◆◇◆春を告げる貝の話◆◇◆

アサリと言えば何を思い浮かべますか?みそ汁、スパゲティ、酒蒸し、ぬた、佃煮、炊き込みご飯、それとも中華料理や韓国料理ですか? 一年中様々な料理方法で日本人が最も食べている貝の一つですね。そういう意味では季節を感じにくいのかも知れませんが、季節によっては旨味が薄かったり、殻の割に身が小さかったりします。それはもちろん旬をはずしているからです。アサリの旬はいよいよこれからです。殻からはみ出しそうな身と濃厚な旨味!ただ、それを味わいつくすためにはちょっとした<コツ>がいります。小売店で「砂抜きアサリ」を買ってきてそのまま料理したら「ジャリッ・・」では、美味さも半減ですものね。

名前の由来と住みか
アサリももちろん大昔から食べられていました。貝塚からもたくさん出土します。でも、東京周辺の貝塚では、アサリよりハマグリの方が量が多いそうです。これは当時の資源量の問題ではなく、単に好みの問題であったようです。同じように獲れて、同じようにして食べるのなら大きい方が食べやすいですよね。

アサリの名前の由来は魚介類を探しとるという意味の「漁(あさ)る」です。かつてはどこの内湾でも、干潟を掘ればザクザク状態だったのでしょう。つまり、干潟を漁ると容易にとれる貝という意味です。

アサリはハマグリ等とともに「マルスダレ貝科」に分類される二枚貝です。日本中の河口付近から水深10m位までの砂泥地が住みかです。一般的に、岸近くよりも沖合に住むアサリ方が、海の香りが強く身が柔らかく美味と言われます。国産品の代表的な産地は東京湾、伊勢湾、三河湾、瀬戸内海、有明湾などで、愛知と千葉県で50%を超えます。
でも近年は国産アサリも減少傾向が続いていて、流通量の3分の2は北朝鮮や韓国、中国からの輸入物に頼っています。

アサリの産卵期は春と秋の2回あります。これは関東では5月と10月で、直前の3〜4月と9月頃に身入りが最も良くなり、旨味成分のコハク酸が増える旬です。ただ、この時季は栄養が身に集中して殻までまわらないため、殻は薄く割れやすいので<取り扱い注意>です。

アサリは海水を吸い込んで、その中のケイソウ等の植物やプランクトンを餌にします。アサリが吸い込む海水は何と1時間に1リットルと言われます!沿岸域の汚染が心配され、そこに住むアサリももちろん心配なのですが、アサリはむしろ海の浄化に一役買っているのですね。そして、生まれてから成貝になるのに3年ほどかかります。

目利きのポイント
殻つきのものは、殻を固く閉じ、模様が鮮明でぬめりのあるもの。臭いがないもの。塩水に入れると勢い良く水を噴射するもの、水管を出すものはもちろん新鮮な証拠です。塩水に漬けても口を開かないものは取り除いてください。また、殻が丸くふくらみを持ち、長めのものを選ぶのも重要なポイントです。殻の短いものはやせているものが多く、旨味が足りません。

砂抜きの極意
「砂抜きアサリ」が当然のように店頭に並んでいますが、中には砂がしっかりと抜けていない物もあります。後でがっかりしないために家庭でもう一度砂抜きすることをおすすめします。
1)準備するものは平らなバットか浅い鍋と3%位(水1リットルに対して塩が大さじに軽く2ハイ)の塩水。この時使う水はできればカルキ抜き。
2)バットに貝を並べ、塩水を浸します。この時の塩水の量は貝殻スレスレ位。多すぎてはダメです。
※深いボールなどを使う場合は、中にザルを入れ、その上にアサリを置いてヒタヒタの塩水にすれば、折角吐いた砂をまた吸わずに済みます。
3)常温の暗い所に置きます。結構潮を吹きますので蓋をして暗くした方がいいです。冷蔵庫には入れないで下さい。温度が低すぎると砂を吐きません。
4)迷信とも言われますが、水の中に釘などの鉄を入れると、よく砂を吐くという説もあります。また水にアルカリイオン水を使うと効果大という話も聞きますが、まだ、試していません。
※この状態で「砂抜きアサリ」なら1〜2時間ほど、「潮干狩りアサリ」なら一晩で砂が抜けます。あまり長時間同じ水に漬けておくと、夏場など貝も水も腐りますので注意してください。

調理のコツ
砂抜きした後、米をとぐ要領で殻どうしをこすり合わせ、汚れやヌメリをよく落とします。汚れていると生臭さが残ります。その後、使うまでの間、ザルに上げて1時間ほど常温に置いた方が旨味が増します。ムキミの場合は塩水で振り洗いします。火を通しすぎると身が固くなってしまいます。基本は手早く調理することです。

アサリパワー全開!
アサリは動脈硬化に有効で、善玉コレステロールを増やす優良食品です。特に、不足すると貧血の原因になるビタミンB12の含有量は貝類一です!また、血液をサラサラにするタウリンも多く含んでいます。アサリを加熱したときに出る汁には、旨味成分や栄養素がタップリ含まれていますので、汁まで残さず食べ尽くしてください!

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年3月号