◆◇◆サザエさんの話◆◇◆
サザエさんの登場人物の名前が面白いですよね。波平にフネ、マスオ、カツオ、ワカメ、タラオ、タイコにイクラ・・・。この中で「イクラ」だけはロシア語なんですよね。あれっ、いきなり話が脱線してしまいました。主人公のサザエさんの話を始めましょう。
お馴染みのサザエは、通年小売店で見かけますが、今の時季はたまに<特売品1個100円>などと目玉商品にする店もあって、非常に身近な食材になっていますね。でも、サザエは豊漁と不漁の差が大きいことで知られ、昨年のように不漁高値の年もありますし、何年かに一度は大発生することもあります。今年は安値傾向ですよ。是非、たくさん食べて下さい。
▼生態
サザエは北海道南部から九州までの水深1〜10m位の岩礁域に住んでいます。ゴツゴツと角を生やした円錐形のユニークな姿の巻き貝で、古腹足目・サザエ科に分類されます。
夜行性で、昼間は岩の割れ目や穴に隠れ、夜になると這い出てきて、アラメやワカメ、ホンダワラなどの海藻を食べます。イケナイ!<這う>などと言ってはサザエさんに叱られます。大きな殻を背負って、二つ?の足を交互に動かし、立派にそしてユーモラスに歩く?のです。この様子は水槽の中でなら見ることができます。
殻の色は褐色と緑が混ざり合った、何とも不思議な色をしていますが、これは食べる海藻によって変わります。試しに偏食させると殻の色も片寄るそうです。内側はきれいな真珠光沢があるので、貝ボタンなどに加工されます。
産卵期はだいたい7〜9月です。産卵後、2年の終わりから3年の初めに成熟し、殻高3〜4cmに成長します。大きいものは10cmにもなり、寿命は7〜8年と言われています。
サザエの雌雄は外見では分かりません。殻から身を取り出して内臓(ほとんどが生殖巣)の色がグリーン系ならメス、クリーム系ならオスです。
市場に入荷しているサザエは6cm、150g前後が中型といったところでしょうか。ところで、姫サザエというのは別種ではなく、若いごく小型のサザエの別名です。
▼サザエの<角>
角はサザエのトレードマークですが、角が大きいもの、小さいものから、まったくないものまで様々です。これは種類が違うわけではなく、育つ環境によります。外洋の波の荒い岩礁に住むものは角が長くなり、内海の波の静かな所に住むものは短くなります。ちなみに、角の長いサザエを水槽で飼うと新たに成長した部分には角は生えてこないそうです。
と言うことは、角は決して飾りではなく何か役目を持っているようです。角は波の荒いところで転がってしまわないためのつっかえ棒だ、という俗説?が案外、真相なのかも知れませんね。
▼名前の由来
サザエの名前の由来はハッキリしません。小家(ささえ)の意味だという説や小さな柄(え)をたくさん付けた貝という意味ではないか等々諸説あるようです。漢字の栄螺はもちろん当て字ですね。他にも拳螺という字も当てられます。その点、英名は明快です。Horned
turbanすなわち、「角状のターバン」というわけです。
▼サザエの目利き
サザエの味は大小や角の有無には関係ありません。大小は料理用途と予算で選んで下さい。とにかく新鮮なものを選びましょう。さて、そのポイントです。触るとふたをさっと閉じたり、身を引っ込めるのはもちろん生きている証です。できればこぶし大で、殻が薄く、振って音のしない重い物がいいです。
▼殻のはずし方
要領が分かれば簡単ですから、是非挑戦してみて下さい。
●貝剥きの代用に洋食ナイフかバターナイフなどあまり鋭くない物を用意して下さい。
1)蓋を固く閉めている状態だとナイフを差し込めないので、蓋を下にして置いておきます。少しすると蓋を持ち上げて出てきますので、そうしたら蓋を上にして手で持ち、貝の中心の隙間に素早くナイフを差し込みます。
2)そのままナイフで口の縁をなぞるように、時計と逆回りに回し、貝柱を切ります。すると蓋の付いた身が殻からはずれて出てきます。
3)殻の中に指を入れて上の部分に残っている貝柱を取り、奥にあるワタを身と一緒に回しながら取り出します。
※角で手を怪我しないように、軍手をすれば滑り止めにもなりますよ。
▼調理のコツ
サザエといえば刺身と壺焼きが代表ですね。刺身はお造りを買うと高いですが、殻付きを買ってきて自分で造ればグッと安上がり!上の要領で殻さえはずせれば、後は切るだけ超簡単です。小型のサザエでナイフを入れにくい場合は、先にさっと茹でると、簡単にナイフが入って身がはずせます。また、サザエの磯の香りと歯ごたえが苦手という人は、刺身に切ってから熱湯にくぐらせ、冷水に放って霜降りにしてみて下さい。食べやすくなりますよ。試してみて下さい。
■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年5月号