◆◇◆海の牛タンの話◆◇◆

舌平目について皆さんはどういうイメージを持っていますか?「ムニエル・フランス料理・高級・グルメ」といったところでしょうか。そんなイメージが定着したのはやはりフランス料理の影響が大きかったようです。日本料理では昔から刺身、塩焼き、煮付けが定番でしたが、あまり重用はされてきませんでした。ところが、フランスの代表的な魚料理として紹介されてから、その美味さが再認識され、イメージアップにもつながったのでしょう。今では、皮を剥いて、内臓処理もされているものが店頭に並んでいるので料理も楽ですよね。

名は体を表す
魚の名前は、その特徴を見事に表しているものが少なくありません。舌平目という名前も舌の形をした平目を連想するだけで実物にかなり近づきます。<名は体を表す>と言いますがまさにその通りですね。また、舌平目には愉快な別名もたくさんあります。「ベロ」「ベタ」「シタ」「ウシノシタ」「クツゾコ」「ゲタ」・・・いずれもうなずけますね。(^^)ちなみに中国では「靴底魚」、韓国では「犬舌魚」というそうです。

でも、よく見ると何とも不思議な姿です
舌平目は「カレイ目・ウシノシタ科」に分類されます。単に舌平目というと、一般的には赤舌平目(標準名)を指します。これに次ぐ代表格の通称黒舌平目の標準名はクロウシノシタです。どちらも平べったい楕円形をしています。口は体の先端ではなく、少し下の方にかなり曲がってついていて、腹面側に開きます。その根本に二つの小さな眼が並んでいます。ヒレは背ビレ、尾ビレ、尻ビレがつながり、尾ははっきり判別できません。仲間の平目やカレイとは随分違う、見れば見るほど不思議な姿をしています。
眼のある側の色は赤舌平目は赤褐色、黒舌平目は黒褐色です。裏側は両方とも白色ですが、店頭で裏側を見せて並んでいても縁のヒレが黒舌平目は黒色なので、区別は容易です。

生態・・・
本州以南の内湾、黄海から南シナ海までの大陸棚の砂泥底が住みかです。昼間は砂泥底に体を埋めてじっとしています。夜になるとエサの小型甲殻類や二枚貝、多毛類などを求めて、ヒラヒラと海底を泳ぎ回ります。産卵期は6〜8月で夏から秋にかけてが旬です。赤舌平目は全長25cm、黒舌平目は35cmになります。また、赤舌平目によく似たイヌノシタは40cm、高麗赤舌平目は55cmにもなります。どちらも本名ではなく、赤舌平目として流通しています。

ヒラメやカレイのように眼が移動します
舌平目もヒラメやカレイと同様、生まれたときは普通の魚のように眼が体の両側にあって、海中を泳いでいます。それが、体長1cmを超えてくると背ビレの先端が、象の鼻のように頭の先まで伸び、その間にできた穴を通って、右眼が左眼側に回転してくるのです!!その後、穴はふさがり頭が広くなります。そして、眼のある側は黒くなり、体を横倒しにして底生生活に入るのです。(O_O)

欧米では<海の女王>
欧米では舌平目は<海の女王>と呼ばれ、その料理は最高級とされているそうです。その代表料理がムニエルなんですね。このムニエルというのはフランス語で「粉屋」という意味です。小麦粉をまぶして焼くことからこの名が付いたわけです。小麦粉の役割は、溶け出した魚の脂や旨味を吸い取って閉じこめることと、ほどよく焦げたときの香ばしさですね。
ところで、欧米で昔から人気の高い舌平目のムニエルは日本の赤、黒舌平目とは違います。ドーバーソールといって、ササウシノシタ科に分類されます。もちろん住みかも北欧から北アフリカです。色は黒舌平目に似ていますが、眼は右側に付いていて、尾もハッキリしています。フライやソテー、スープなど多くの料理法に合う、風味のよい魚として親しまれているそうです。

目利きのポイント
身が厚く、眼のある側の色が鮮やかでツヤがあること、透明なヌメリがあることが目利きのポイントです。

食べ方
いまや定番はムニエルです。肉は淡泊ですが、砂泥底に住むため、多少臭みがあることがあります。それを消すためにも、バターや牛乳、ワイン、ハーブなどを使った洋風料理によく合います。ムニエルにするときも、下ごしらえをして小麦粉をまぶす前に5〜10分ほど牛乳に浸すとクセがとれて美味しくなります。
和食派の方には、鮮度が良ければもちろん刺身。透明感のある白身で美味いです。サッパリと塩焼きもおすすめです。定番は煮付け。小型のものは空揚げや干物もいいですよ。また、ウロコを引いてから剥いた皮は捨てずに空揚げにして下さい。これもイケます!

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年8月号