◆◇◆とろりと甘いえびの話◆◇◆
甘えびと言えば、刺身、寿司だねとして圧倒的な人気を誇ります。他の海老達のように色々な料理にはしないで、普通は生食オンリーと言ってもいいほどですね。店頭で見かけるのも、生か冷凍の姿の物、身だけ殻を剥いてある物、頭を取って殻を剥いてある物などです。一般的に冷凍物は安く、生だとぐっと高くなっていますね。そんな中から皆さんが買い求めるときには、是非、姿の物をオススメします。旨味の詰まった頭を捨ててしまうなんてもったいない!そんな訳で今月は甘えびを食べ尽くしましょう。
▼甘えびってこんな海老です
甘えびは「十脚目タラバエビ科」に分類されます。タラバとは鱈場、タラの漁場の意味です。昨年の11月号でタラバガニを取り上げたときにお話ししましたので覚えている方も多いと思います。甘えびも同じく寒海に住むエビです。一般に甘えびの通称で呼ばれているのは、ホッコクアカエビのことです。色はお馴染みのきれいな朱色ですが、生きているときは体の中が透き通って見えるほど透明です。体長は13cmほどになり、エビの仲間では中型といったところですね。
住みかは日本海沿岸からオホーツク海、ベーリング海、アラスカ湾で場所によって違いますが、だいたい水深300mから500mの深海底です。アイスランドやノルウェー、グリーンランドなど北大西洋に分布して日本にたくさん輸入されている甘えびは、最近別種であることが分かりましたが、ほとんど見分けられないほど似ています。
▽混同されやすい仲間たち
甘えびの仲間には、トヤマエビ、ボタンエビ、モロトゲアカエビ(別名シマエビ)などがいます。トヤマエビは甘えびよりやや大きく15cmほどになり、体色は甘えびより薄い赤色で、腹部に横縞模様があるのが特徴です。住みかは福井県以北の日本海側と北海道以北の北太平洋の沿岸域で、甘えびの分布とほぼ重なります。でも、甘えびよりやや浅い水深200〜300mの海底を住みかにしているので、住み分けができているようです。
ところで、このトヤマエビという名は最初に研究採取されたのが富山湾であることから付けられたのですが、漁獲量は北海道が圧倒的に多くなっています。そして、このトヤマエビは一般的にボタンエビとして流通しています。(?_?) 相場は甘えびの倍以上もします!
それでは本家のボタンエビはと言いますと、体長はさらに大きく20cm位になり、体色はやや濃い橙赤色です。腹部に赤褐色の斑紋があるのが特徴です。住みかは北海道の噴火湾から土佐湾までの水深300〜500mの砂泥底ですが漁獲量は少ないです。このためなのか、今やボタンエビといえば、本家を差し置いてトヤマエビの通称として定着してしまいました。
甘えびの仲間達の共通項は、やはり「甘味」ですね。それぞれの違いこそあれ、濃厚な甘味と旨味は絶品です!8割以上の水分を含む肉質に甘味成分を持つ良質のタンパク質を豊富に持っていることが「とろりとした甘味」の秘密です(^^)。
▼生態・・・
殻付きの甘えびを買ってきたときに、腹部に青い卵がビッシリ付いているのを見たことがある方も多いと思います。甘えびの産卵期は3〜5月で、一度に800〜4200粒もの卵を産んで、その後10ヶ月間もこの卵を腹に抱えているのです。そして、産卵の翌年1〜3月頃に孵化した幼生を放ちます。
幼生は浮游生活をしながら成長し、次第に海底付近に居着くようになります。この幼生たちはすべてオスで、2〜3歳でオスとして成熟します。エサは砂泥底に住む小型のエビやカニ、ゴカイなどです。
▽店頭の甘えびはメスオンリー!?
今年の7月号で紹介したコチと同じくオスとして産まれた甘えびは6〜7cm位に成長する5歳過ぎからメスへ性転換します!そんな訳で、商品化されるサイズの甘えびはすべてメスなのです。甘えびは一生の内に数回産卵し、寿命は約10年です。
▽スター誕生!
甘えびは今や寿司だねとしてもスター級の存在ですが、その誕生はごくごく最近のことです。漁獲される地元ではもちろん食べられていたのですが、ローカルだった存在が一躍全国に知られるようになったのは、1970年代以降です。北海道で大量に漁獲され始めたのと、都会の百貨店などでの宣伝が功を奏して、大ヒットとなりました。ですから、全国的知られるようになってから、まだ20数年しか経っていないのです。
▼甘えびパワー全開!
甘えびは高タンパク低脂肪の健康食品です!エビはコレステロールが多いと以前は言われていましたがそれは誤解です。逆にエビにはコレステロールを除去するタウリン、キチン、アスタキサンチンがバランスよく含まれていることが分かりました。これらの成分は血液中のコレステロールの悪玉を減らして善玉を増やしたり、血圧を下げるなどの効果があります。動脈硬化や高血圧、糖尿病の予防と治療や肝機能の改善等々に効果がある<優れもの>です(^^)//""""""
▼甘えびを食べ尽くそう!
何と言っても刺身、生食が一番ですね。生で食べる場合も頭の中のミソや腹に抱えた卵も是非食べてみて下さい。殻付きの甘えびであれば、卵を親指で押し出して器に取ってから頭と尻尾だけ残して殻を剥きます。お好みの分量の剥いた甘えびを盛り付けて、集めた卵を添えてもいいですし、卵を入れた小鉢にウズラの卵を落とすのもいいですよ。食べるときにもいだ頭はよ〜くすすって下さい。口の中に旨味が広がります。
★生で食べるのはもちろん鮮度の良いものに限ります。殻の赤色が白っぽくさめていたり頭の先や尻尾が黒ずんでいるのは鮮度が落ちた証拠です。ただし、色が綺麗で卵を持っていないのに頭の中心部分だけが黒いのは、産卵前で頭の中に緑色の卵(内子)を持っているものなので大丈夫ですよ。
頭のミソを吸うのに抵抗のある方、それでも頭を捨てないで下さい。みそ汁に入れると最高の旨味が出ます!他の具はお好みで豆腐やネギでもいいです。甘えびは身の8割が水分なので加熱すると味が落ちると言われていますが、殻付きのままの空揚げや塩焼きはベリグーです。
■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年11月号