◆◇◆とても身近な出世魚の話◆◇◆

ブリは通年出回っている、もっとも人気の高い魚の一つです。通年出回る脂のタップリのったブリと言えばもちろん養殖物で、全消費量の8割近くを占めます。養殖物は常に旬の状態?と言えますね。一方、天然物は回遊魚で、成長に伴い名前を変えて店頭に並ぶ、とても身近な出世魚としても知られます。そして、寒ブリと呼ばれる通り、冬が旬です(^^)。

ブリってこんな魚です
ブリは、スズキ目アジ科ブリ属に分類されます。体は美しい紡錘形で背は青色、腹は銀白色、目から尾にかけて黄色い帯があります。体長は最大で1mを超えます。背ビレと胸ビレの付け根は窪んでいます。これは高速で泳ぐときにヒレを体に密着させてしまうためです。ちなみに全速だと時速40kmにもなると言われます!仲間には姿のよく似たカンパチやヒラマサがいますが、旬はどちらも夏です。

生態・・・
ブリは回遊海域から日本海、太平洋、東シナ海の3グループに分けられます。産卵期は各海域で違うのですがピークは3〜5月です。産卵後の卵は2日ほどで孵化し、幼魚は海面近くを漂います。1cm位になると流れ藻の下に集まって生活し、プランクトンや小魚や小エビを食べて成長します。この幼魚期をモジャコ(藻雑魚)と呼びます。モジャコは住みかの藻とともに暖流に乗って北上して行きます。これを春から夏にかけて網で捕り、イケスに入れて養殖するのがブリ(ハマチ)の養殖です。

そして、10cm位になると姿もブリらしくなり、15cmを超える7月頃には住み慣れた藻を離れて沿岸域に群れで住みます。1年で30cm、2年で50cm、3年で60cm、4、5年で7、80cmに成長します。ブリは3年で成熟し、大きな回遊もこの時期から始まります。適水温(14〜19度)とエサを求めて春夏は北上し、秋から冬にかけて産卵や越冬のために南下するのです。

ブリ起こし
日本海の寒ブリとは、11〜翌年1月にかけて青森から能登を経て南下する大型のブリを指します。通常は沖合を通るのですが、大時化になると外海を避けて沿岸に近づきます。横殴りの雪が雷とともに大暴れすると北陸ではこれを昔から「ブリ起こし」が来たと言うそうです。そして、これを合図に北陸の各漁場では寒ブリ漁が最盛期を迎えます。

ウン!?これと同じような話がありましたね。そう、vol.31<神様がつかわした魚の話>のハタハタも日本海の冬の嵐が沿岸に押し寄せる合図でした!

今が主役の越中ブリ
北陸の寒ブリは、身の締まりも脂の乗りも最高とされ、特に富山湾の定置網で獲れた大型のブリは越中ブリ、氷見ブリとして当市場にも入荷し、常に高値を付けています。サイズは10〜11kで通常の養殖ブリの倍、相場は3〜4倍以上です(O_O)!他にも日本海のブリは能登、丹後、出雲、壱岐、対馬などが有名ですね。

今は昔の小田原ブリ
今でこそ「ブランドぶり」は北陸をはじめとする日本海に集中していますが、かつてはブリ漁日本一の名をほしいままにしたのは小田原(神奈川県)でした。戦前の最盛期には相模湾の一漁場で、一漁期に24万5千尾の水揚げがあったと言います。それが昭和40年代以降は激減の一途をたどりました。平成11年の2、3月に前年の50倍の水揚げで大豊漁と騒がれた時で、わずか2,185尾だったそうです(‥;)

名前の由来と出世魚
ブリの別名は全国で何と100近くあるそうです!それだけ広く親しまれている証拠ですね。成長に伴う代表的な名前はこうです。地域によっても違いますが大きさのだいたいの目安です。
   ・20cm以下・40cm以下・80cm以下・それ以上
△関東:・ワカシ・イナダ ・ワラサ ・ブリ
△関西:・ツバス・ハマチ ・メジロ ・ブリ
△能登:・ツバイソ、コズクラ、フクラギ・ガンド・ニマイズル・ハマチ、コブリ、ブリ・アオブリ・オオブリ(1歳ごとに名前が変わります)

それでは本家ブリの名前の由来はと言いますといくつかの説があります。ブリはアブラが多いことから、アが抜けてラがリに訛ったとする説。鰤という漢字は老魚という意味があるので、「年振りたる魚」の振りがブリに訛ったという説。美しい姿の「さかな振りが良い」の振りがブリに訛った説。色々ありますね。さて、あなたはどれだと思いますか?ちなみに、鰤というのは国字で、中国で「魚師」というのは老魚・大魚のことだそうです。また、英名は「yellowtail」です。

年取り魚
大晦日の年取りに吉例として食べる魚を「年取り魚」といいます。日本各地でこの年取り魚は様々ですが、大きく分けると「東の塩鮭」、「西の塩鰤」に二分されます。保存方法と交通手段が限られた昔は、当然のことだったのでしょう。そうそう、雑煮に入れる餅の形も境目は多少ずれますが、東が角、西が丸だそうですね(^^)。今は年中、何でも欲しい物が手に入るという便利すぎる?時代ですが、年越しにはこれが欠かせない、という風習はこれからも大切にしたいですね。

ぶりパワー全開!
ブリは栄養満点の青ざかなです!良質のタンパク質と脂質、ビタミンと鉄も豊富です。これらは低血圧、貧血、動脈硬化、心筋梗塞などの予防と改善に効果があります。特に血合い肉や皮にこれらの栄養素が多いので、是非残さずに食べて下さいね。天然物と養殖物ではタンパク質と脂質の含有量はほぼ同じですが、ビタミンやミネラル、そして旨味成分は天然の方が多く含まれています。季節ごとに出回る天然物は脂が少ないからと敬遠しないで、この旨味を味わって下さい。

おまけ!?ブリのオスとメスの見分け方
メスの黒目は円形で、オスの黒目は前の方にややとがった形をしています!今度店頭でブリの頭を見つけたらにらめっこしてみて下さい(*^_^*)

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年12月号